これまでの展覧会の紹介


トークショー風景 夏目 なにを指して今の漫画と感じているかによるんですよね。最近の「のだめカンタービレ」とかいうのは非常に隙のある絵で入りやすい。今は物語に入るっていうのはああいう絵の方がいいっていうのがあって。今の人で、新しい絵って、けっこう隙のない絵を描くんですよね。絵のレベルってものすごくあがっている。

湯浅 最近の流行りの音楽も全く同じで音詰め込みすぎで押されちゃうんですよ。オシロスコープにかけると昔の音って丸形になるんですけど、今のはギザギザなんです。立っているところが多すぎて、耳に来る前に脳にいっちゃう。

山下 分かる。俺だめだ、そういうの。

湯浅 ゲームセンターのいろんな機械がいっぺんになっているような状態。そういうのを漫画の画面に見ることが多くて。漫画と音楽似てるなって。僕たちが見ていて、違和感は多少あっても、いいなっていうのは、画面とかキャラクターとかセリフ回しとか、吹き出しの大きさとか、夏目さんおっしゃった隙のあるほうがいいなって思う。その辺で年取ったなって思うこともあるんですけど。極端な話、しりあがり寿さんみたいな、本当に極端な例でへなへなっていう二本の線で漫画になっちゃうっていうね。しりあがりさんをこっちの極端の方に置くと、林さんは、しりあがりさんに近い世界だっていうのはちょっとあるなって。情報量の多い音楽があるように、ものすごく描き込みとか構図を凝っているんですけど、こんなにこのコマでかくなくていいだろ。そういう漫画って結構ある。

山下 もうね、読めないですよ。さしさわりあるんですけど正直読めない。

 夏目さんは、そのあたり。

夏目 僕は、自分の中で苦手とかあるんですけど、もともとの好き嫌いはとりあえず置いとかないと批評が出来ない。(笑)

山下 僕もどんな展覧会でも見に行かなくちゃいけない。五分で出てくる展覧会もありますけどね。(笑)

夏目 「萌え」とかいわれても、とりあえずわからないわけ。自分の中で可能な限りわかろうとする。いろいろやってみて。そうすると、僕の中では、これは「サスケ」のおちんちんみたいなものかな、という。(笑)脈絡をつけて辿っていく。全部はもちろんわからないけど。このへんまではなんとなくわかるかなって。いわゆる萌え漫画は要素が決まっていて、要素の順列組み合わせになっている。そういうことがわかって、そういうところに快感があるんだなって推測つけばいいかなって。ところで林さんの中には批評家性がものすごく強くありますよね。

 夏目さんこそ。

夏目 そういわれると・・・帰ろうかな。(笑)そこのところどうですか? 僕はある。はっきりと1989年に手塚さんが亡くなったその後、本を書いて、批評家としての自分を逃げないでやろうと思って。それまでは漫画家でよかったんですけれど。そこから批評家ということに自分でなったので。林さんの中にはそういうのはないですか?

 話が来たら考えますけど。固いのはね〜。

夏目 やらないんですか?

 僕自身は、小説っぽく語るのは好きなんですけど。

湯浅 「グッピー」もそうですよね。

 やるんだったら楽しいのが良い。あんまり堅苦しい美術論とか文学論とか、そんなのじゃないほうが。

湯浅 まああの、実は予定の時間を過ぎて、ちょっとまとめに入りましょう。これでまとめるのも難しいんですけど。だいたいどういう本かをまだ読んでない人にわかっていただけたでしょうか。これ先ほども話したけど、注釈がたくさんついているので、すごく授業に使いやすい。

夏目 それまとめ?(笑)

山下 美術史の授業の教材にするのにすっごくいいですよ。まじで。

湯浅 図書館にはこれは必携ですよね。

 営業しているみたい。

山下 でも結構値段するんですよね、これね。

湯浅 ただ、とても美しいいい本ですので。

夏目 日本では多分こういう形態って珍しいと思いますよ。フランスなんかだとむしろこれが普通。値段的にも。

湯浅 フランスだったらすぐ出るんじゃないですかね。

夏目 フランス人は喜びますね。

 日本でも出てますよ!(笑)そこちょっと語られていない。日本の漫画、漫画って言うけれども、すごいですよ、フランスの70年代カラー漫画。

夏目 ひとつ言えるのは色ですよね。日本の漫画は、色を捨てることによって経済的には安い、悪い紙で線画で白黒、スクリーントーン使って、独自の世界を開いた。トーンを削ったりね。基本的にはフランスやアメリカ、他の国はほとんどカラー。色彩表現はものすごく発達している。カラーに関しては日本のものはまるで太刀打ちできないレベル。だから日本の市場では非常に珍しい本ですよね。

山下 4000円の漫画ってちょっと無いですよね。

 こだわるな。

湯浅 逆価格破壊みたいな。(笑)詳しくはこの漫画をお読みいただくのが一番良いんですけど。最後にお伺いしますが、林さんはこの後漫画を描く予定は?

 「グッピー」は湾岸戦争前で終わってますから、それの続編を描こうと思ってます。SFです。絵が決まると出来るということで、主人公が決まってバックの絵が決まると。

湯浅 大雑把な構想というのはあるんですか?

 もちろんもちろん。僕がガロに出会ったときに、白土さんにお会いして伺った話では、「カムイ伝」は近代まで来るっていう話だったんですけど。どうもそうではなくなった。その意志を継ぐ。(笑)われわれ弟子がね。弟子ってことではないですが、「ガロ」出身ですから、近代についてなにがしかのね。

湯浅 楽しみです。早く読みたいってところではありますが。タイミングがあるでしょうから、待ちたいと思います。ありがとうございました。